今日、ふとクレーンゲームを見て、ある事件を思いだしたので、記事にしました(笑)
あらためて調べてみると、それは2017年末。
ちょうど仮想通貨バブルの頃だったので、少し懐かしく思いました。
「クレーンゲーム詐欺」事件の概要
- 2017年12月、ゲームセンター運営会社の社長と社員ら男女計6人が詐欺の疑いで逮捕。
- 大阪市内のゲームセンターで、クレーンゲーム機の景品が取れないように設定。
- 景品が取れないようにし、客4人に「絶対取れる」などとウソをついて、約47万円をだまし取った疑い。
- 同社では「(客が)どこから来たか確認する」「3回分の無料券を渡す」といった勧誘マニュアルを作成。
- 「トラブルになりにくいよう、すぐに地元に帰る旅行者を狙ってやっていた」
- 中には「165万円だまし取られた」客もいるという。
- 高額被害の理由は「プレイステーション4の本体を見せたり、帰ろうとするとiPadなどを景品として追加するなどして続けさせようとしていた」等。
(※ もっと知りたい方は、「クレーンゲーム 詐欺 大阪」などでググってみてください。結構出てきます。)
本件のポイント
まず、景品が取れない ⇒ 絶対に損をしないですよね。
ただ、「絶対に取れないクレーンゲーム」なんて、リピーターがつくはずもありません。
そこで、この会社が狙ったのが「旅行者」です。
お土産袋や旅行バッグなどを持った人を狙って声をかけるんです。
ターゲットと見たら、最初にサービス券を渡します。
このサービス券で「3回の無料プレイ」ができるとのこと。
無料と聞いたら、つい「ま、やってもいいか」と思いますよね。
でも、当然ながら景品は取れない設定なので、3回だろうが10回だろうが、取れるはずがないんです。
と同時に、お客さんには「3回無料だったし、少しくらいお金出しても良いかな」という意識が芽生えます。
その後、何回かプレイをするのですが、もちろん景品は取ることができません。
お客さんが諦めて帰ろうとすると、店員が「元を取りましょう!」「もう少しで取れますよ!」などと言って、ゲームを続けさせようとします。
しかも、店員が(クレーンゲームの設定を操作して)実際に景品を取ってみせるのです。
※ どうやら怪しいスイッチよって設定を変更していたようです(笑)
そうして再び何回か続けさせた後、お客さんを言葉巧みに、より高価な景品のあるクレーンゲームへと誘導していきます。
ゲームのプレイ料金もだんだん高価になり、1回500円、1000円、1万円となっていきます。
もう、このお客さんも後には引けませんね。
何としても「元が取りたい!」と思っています。
本件で恐ろしいのは、ここで終わらないことです。
手持ちの現金がなくなったお客さんをATM の所まで案内し、現金を引き出させて、また一緒に戻ってきたりしたとのこと。
あるいは、LINEの交換などをして連絡先を聞き出し、 再来店を誘っていたりもしたようです。
上にもある通り、魅力的な景品を入れることによって、最大165万円も使ってしまった人がいるというのは驚きです!
165万円!一体、プレステ4を何個取れれば元が取れるんでしょうか?(笑)
マーケティング的視点で解説
目標を定める
本件は「取れない=全て利益」ですが、これは詐欺なので、実際の商売ではこうはいきませんね。
でも、最初に「売上(利益)目標をしっかり掲げる」のは重要なことです。
(そもそも、何でコレをやろうとしたのかという点に、多少興味がありますね~。)
ターゲットを絞る
目標達成のために、「旅行者」と、きっちりターゲットを定めています。
また、具体的にマニュアル等を作成して、旅行者を見分けるノウハウ等を蓄積するとともに、誰でもできるようなプロセス化も実現しています。
この辺は、まさにビジネスと同じですね。
無料というエサ
彼らは、自らの「射程圏内」におびき寄せるために「無料券」を使っています。
「タダより高いものはない」、これを体で理解していない人には、まず拒めない強力な作戦ですね。
一般消費者には、「タダ」は本当に効果的なんです。
返報性の法則
タダでやらせてもらって、かつ丁寧な対応をされた場合、人は自動的に「申し訳ないな」「報いなきゃ」と思います。
いわゆる「スーパーの試食」、アレと同じです(笑)
(これを「返報性の法則」といいます。ビジネスをやっている方なら、ほぼ100%知っています。)
もちろん、それを最大限に引き出す対応をしていたと推察できますね。
証明
お客さんが、「もしかして、景品はとれないのでは?」と思ったタイミングを見計らって、店員が、実際に景品を取って見せることで、お客さんは安心する(信じる)ことができます。
同時に「自分にできないはずはない」という闘志も駆り立てられますね。
これで、ますます深みにハマっていくのです。
アップセル
お客さんの「情熱を掻き立て」たら、いよいよ「高額ゲーム」へのお誘いです(笑)
「絶対に損をしたくない!」「取り返したい!」そんな気持ちを最大限に煽って、夢中にさせていたことでしょう。
情報商材などでは、この仕組みを知らない人が、「連続アップセル攻撃」で、とんでもない出費に追い込まれているケースもたくさんあります。
(仮想通貨マンであっても、「損切り上手な方」は心配していませんが、「損切りできない方」は、まず同じような事になると考えておいたほうがいいでしょう。)
リピート
実際に、どの程度有効であったのかはわかりませんが、再度の来店を促すことでLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を上げていこうと努力していたことは確かですよね。
まとめ
こういうの読んで「自分だけは大丈夫」と思う人、多いんです(笑)
でも、ビジネスの継続を前提としなければ(つまり詐欺等)、消費思考の人をカモるのなんて実に簡単です。
(※「消費思考の人」については、貧乏か・お金持ちか の分岐点【消費思考 ⇒ 投資思考へ】をご覧ください。)
「無料」
「簡単・楽」
「凄い見返りが期待できそう」
「損をしたくない・元をとりたい」
こんなポイントを突くだけでいいからです。
「狩る側の人間」からすれば、子供を扱うようなものですね。
本件は「取れない」設定だったのでアウトですが、「取れる確率が低い」なら詐欺ではありませんよね。
例えば、パチンコや宝くじなどです。
あるいは、昨今盛り上がった、某キャッシュレス決済アプリのキャンペーンでは、「〇人に1人はタダ!」なんてのもあります。
内容的には「一律5%引き」と同じでも、「20人に1人が無料!」のほうが、人々がいきり立つからです。
合法的にカモる!
これは、ごく普通に大企業でも行われていることです。
「自分は大丈夫」と思っている方へ。
たとえば各企業が、どんな点を突いて・どんな効果を狙っているかを解説できるのであれば、多分大丈夫です!