原価や経費

広告宣伝とアンカリング効果 ~ 2019年 正月の騒動「すしざんまいの一番マグロ」「ZOZO前澤社長のお年玉」で自社戦略を再考

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鮪

 

史上最高額で落札された2019年の一番マグロ

2019年1月5日に行われたマグロの初競り。価格は3億3360万円と史上最高額でした。
マグロ一本に3億円以上とは、いやはや…(笑)

ちなみに、2011年以降の初セリ最高落札価格はご覧の通り。

年 度 金 額(万円)
2011年 3,249
2012年 5,649
2013年 15,540
2014年 736
2015年 435
2016年 1,400
2017年 7,420
2018年 3,645

それまでの最高価格である 1億5,540万円(2013年)を2倍以上の更新です。

その一番マグロは高い?

マグロの歩留まりは約6割と言われています。
これを単純計算すれば、一貫あたりの原価約34,000円に対して売価約400円ですから、直接的な商売としては全く成立しません。

一方、飲食業などのサービス業の広告宣伝費は、総売上の5~8%程度が標準的です。

すしざんまいの運営会社である㈱喜代村の売上、少し古いですがネット上では、約260億円(2016年9月期)との事。
※ ここでは、細かい数字にはこだわらないこととします。

仮に売上がそのままで、広告宣伝費の予算比率を 5%とすれば
260億円× 5%= 13億円
となりますので、そのうちの3.3億円です。
全予算の25%程度であれば、決して過剰とまでは言えないですよね。

もちろん、社員さんの「そんな金あるんなら給料上げてくれ」と言いたい気持ちも理解はできます(^^♪
しかし、この金額で、全国的にメディアで過剰とも言えるほどの報道がされるのですから、広告効果としてはかなりのもの。

TVでCMを打てば、すぐに1億円程度はかかりますし、何より「マグロに対するこだわり」や「情熱」は、CMではなかなか伝えきれません。

結果、売上に結びつくのなら、社員さんの生活も安泰ということです。

ライバル会社はどうしていた?

例えば、ライバル会社の「すし好」も一番マグロを競り落とすと公言し、それについてメディア取材を受けていました。
こちらは、セリ落とすに至りませんでしたので、費用は0円!(通常の仕入は別です。)

効果は段違いですが、そうは言っても「0円」ですからね。
どちらがいいのかは一概には言えませんね。

マグロ漁師さんの取り分は?

ちなみに、この一番マグロ、獲ったのは青森県大間町のマグロ漁師、藤枝亮一さん(64)。
漁師さんには、落札額の約89%が入りますので
3.3億円 × 89% = 約2.97億円(凄い!)

下世話なことではありますが、今年の税金まで計算すると…

もし、何の設備投資や節税対策をしなければ、個人事業主なら約半分の 1.4億円、法人形態でも約1億円程度にはなると推察されます。

が、当然そんな事はないでしょう。

普通に考えても

  • 設備だけを最新&フル装備にする
  • 船を買い替える
  • 船を買い増す
  • 人を雇い入れる

くらいは検討しますよね。

しかし、そもそも初セリ用のマグロを釣り上げるというだけでも大変なのに、豊洲移転後初・当日の最大サイズで史上最高額をつけたとなれば、もはや宝くじ並みの確率と言っても過言ではないかもしれません。

さて。もし、あなたがこのような強運に基づく大金をゲットした場合、どのような資金使途を計画しますか?
また、その根拠をどのように算定しますか?

なまじ手元に現金があるので非常に悩むでしょうし、ここでの判断は、今後にかなりの影響が出るところですね。

ZOZO前澤社長のお年玉企画

これはTwitter上で展開されました。ご存知ですか?
一番マグロと同日の2019年1月5日の話です。

100名に対して100万円=総額1億円をプレゼントするという企画ですね。

条件は、
「前澤社長(のTwitterアカウント)をフォローすること」
「その企画のツイートをリツイートすること」
だけで、わずか2日間で400万回以上リツイートされ、世界記録を樹立したとのこと。

リツイート側から見れば当選確率は1/40,000、つまり4万人に1人なので、これもほぼ宝くじ並みです。
(なのに皆よく踊りましたね!)

金額的にはマグロの1/3以下に感じますが、これは前澤社長個人のポケットマネーとの事なので、税引前に換算すれば、軽く2億円分以上を配ったことになります。

そして話題性はあったものの、案の定、その後の評判は芳しくなく、妬みやひがみが渦巻く結果になりました。

あなたはこの戦略をどう思いますか?

もし、ある程度の予算があれば、どこまで・どういう風にやりたいですか?

まとめ

「自らニュースを作る」基本的に、強者の戦略ではあります。
しかし、我々のような弱者であっても、自分たちのテリトリー・ニッチな世界での話題作りは出来ますよね。

事業規模にかかわらず、自分には関係ないと思わず、そして話題が沸騰している時のみならず、「その後」も追いかけてみる。
広告効果にかぎらす、そうすることで、本当の効果を検証できます。

一方、このような派手な事は、次回以降のハードルや人々の期待値が上がります。
そして、それに応えようとして無理をしてしまうケースも多々あります。

すしざんまいには、来年以降も3億円程度までなら落札しなければならないような空気感が生まれます。
前澤社長も、来年のお年玉企画はどうするんだろうという期待感を押し付けられます。

これはたとえば、近所のスーパーが「大特売」をやれば、お客さまはその後の安売りを期待して待ってしまいますし、やらざるを得ない雰囲気になってしまうのと同じですね。

このようなものを「アンカリング効果」といいます。
何かをやるのであれば、「アンカー(錨)を打った後の影響」についても十分に考えたいところです。

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